[雑学・自由研究] コンクリートの中にはなぜ鉄筋が入っている? その理由を解説

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目次

概要

今回の話題は鉄筋コンクリートです.

コンクリートだけでもかなり強力な材料ですが,なぜ鉄筋と組み合わせたものが多いのかについて考えたことはありますか?

その理由について紐解いていきましょう.

なお,「鉄筋にコンクリートを組み合わせた」のではなく,「コンクリートに鉄筋を組み合わせた」という目線でお話します.

今回は数式が出てきませんので,算数や数学が苦手な方でも安心です.

自由研究にもまとめやすいような順番で書いていきますね!


ちなみに,「鉄筋コンクリート工学」という分野もあるんですよ.

鉄筋コンクリートって何?

コンクリートの柱の写真

鉄筋コンクリートはその名の通り,コンクリートの中に鉄筋が入っている物体のことを指します.

上の図みたいなビルやマンションなどの大きな建物によく使われていますね.

英語では「Reinforced Concrete」と書き「リインフォースドコンクリート」と読みます.「(鉄筋で)補強されたコンクリート」ということです.

賃貸物件情報サイトなどで「RC造」と書かれていたら,それは鉄筋コンクリートで作られた建物であることを表します.

鉄筋だけでなく鉄骨を用いた「Steel Reinforced Concrete」もあります.同様に「SRC造」と書かれていたらこれに該当して,RCよりもより強固な建物であることが予想されます.

なんで鉄筋とコンクリートを組み合わせたのか?

鉄筋コンクリートの写真

本題です.

皆さんはコンクリートと聞くと,とても頑丈,力を加えてもびくともしない,などといった一言でいえば「固くて壊れにくい」ものであると想像すると思います.

大方正解ではあるのですが,そんなコンクリートにもちゃんと弱点がありまして,それを補っているのが鉄筋なのです.まさに「Reinforced Concrete」ってわけですね.

そして理由は一つだけではありません.

いくつかありますので,順番に解説していきます.

コンクリートは引っ張られる力に弱い

力の向きには,主に圧縮(あっしゅく)と引張(ひっぱり)があります.

粘土をこねるときに両手のてのひらで押し合ってぺたんこにする力が圧縮で,伸ばしてちぎるような力が引張です.

図も付け加えてそれぞれ見ていきましょう.

まずは圧縮の図です.

コンクリートの圧縮の図
引用どうぞ

実際にはコンクリートがこんな大きく変形することはまずありませんので,イメージ図だと思ってください.

このように,押しつぶされる力に対しては強く,めったなことでは壊れません.

次に引張の図を見てみましょう.

コンクリートの引っ張りの図
引用どうぞ

引っ張られると亀裂(きれつ)が生じて,最悪の場合まっぷたつに分かれます.

グミを握りつぶすのは大変でも,引きちぎるのは簡単という感じです.

しかし図を出しただけだとどれだけ引張に弱いのかわかりづらいですね.

一般に,引張に対する強度(壊れにくさ)は,圧縮に対する強度の10%と言われます.

つまりたったの1/10の力で壊れるのです.

ちなみに建築業界では引張に対する強度はゼロ,すなわちないものとして扱うそうです.


ではどうしてこんなにも引張に弱いのでしょうか?

まずコンクリートの材料を見ていきましょう.

コンクリートは,主にセメント,水,大小さまざまな石でできています.

セメントを水で溶いて固まったものがよく見る灰色の部分です.

石は接着剤を付けてくっつけるわけではなく,水で溶いたセメントの中に混ぜ込むだけですので,セメントとくっつく力はそこまで強くありません.

よって(人間の素手では厳しいですが)少し引っ張られるとはがれてしまい,そこから亀裂が生じます.

他にも理由はありますが,気泡や石の形状からなる応力集中・・・とか言っても難しい話になるだけですので,上記の話だけ覚えてもらえればいいかなと思います.


ここまででとりあえずコンクリートが引っ張られる力に弱いというのがわかってもらえたと思いますが,それを補うのが鉄筋なのです.

鉄筋は圧縮に対しても引張に対しても強度の差はありません.

そこでコンクリートの中に埋め込んで引張に対する力を受け持ってもらおうというわけですね!

引張られる側と鉄筋の位置を示す図
引用どうぞ

鉄筋の位置は,コンクリートの中央ではなく,上図のように端っこの方に入れるのが普通です.(図だと片側しかないけど,両側に入れる方が多いかと思います.)

コンクリートは脆性材料

難しい言葉が出てきましたね.

脆性材料(ぜいせいざいりょう)とは,壊れるときに一気にバキッと壊れる材料のことをいいます.

コンクリートだとイメージしづらいのでクッキーにしましょう.

クッキーを折り曲げようとすると,実際には折り曲がることなくいきなり割れますよね.

このような壊れ方をするものを脆性というのです.

脆性材料の図
引用どうぞ

対して,いきなり壊れるのではなく,ある程度の粘りを見せるものを靭性材料(じんせいざいりょう)といいます.

鉄筋はこちらにあたります.

これも鉄筋だとイメージしづらいので輪ゴムにしましょう.

輪ゴムを引っ張るとぐいーーーーーーんとたくさん伸びて,やがて限界を迎えるとプチンとちぎれますね.

このようにいきなり壊れるのではなく,ある程度変形しながら壊れるものを靭性というのです.

靭性材料の図
引用どうぞ


ここでもう一つ想像してください.

橋を渡るときに,見た目は問題なさそうだけど,渡ってる途中でいきなり橋が壊れると困りますよね.困るとかいう次元じゃないが.

壊れるかも! と思ってから逃げるくらいの余裕は欲しいものです.

なので靭性材料である鉄筋を入れて,少しでも壊れるまで粘りを見せるようにしてあげることも大切なのです.

コンクリートと鉄筋の熱膨張係数が近い

また難しい言葉が出てきましたね.

ですが,メチャメチャ大事な理由です.

まず熱膨張係数とはなんぞやというところから行きましょう.

物体は,温度が上がると広がって大きくなり,逆に冷えると縮んで小さくなります.

これは基本どんな物体にでも起こる現象ですが,物体によってどれくらい大きくなったり小さくなったりするのかは異なります.

じゃあどれくらい大きくなるんじゃいといったのが熱膨張係数(ねつぼうちょうけいすう)あるいは線膨張係数(せんぼうちょうけいすう)といいます.

熱膨張係数の説明

次に,温度によって膨らんだり縮んだりするというこの現象を,コンクリートとその中に入っている物体で考えてみましょう.

中の物体の方が熱膨張係数が大きく,温度が上がった時を想定します.

中の物体は大きく膨らみたいのですが,コンクリートが少ししか膨らまないので,動きを阻害されることになります.

ここでおとなしく大きくなるのを止めてくれればいいのですが,この大きくなる力は思いのほか強く,コンクリートを無理やり押しのけて膨らもうとします.

するとコンクリートは内部から無駄に力を受けることになり,最悪の場合これだけで壊れるということもあるかもしれません.

コンクリートだといまいちイメージしづらいので,身動きが取れないほどの満員電車を想定しましょう.

コンクリートの中に入った物体=電車の中の方にいる人とします.

便宜上この人を「Aさん」,他の乗客を「Bさんたち」としましょう.

中に入った物体が膨らむ=Aさんがとある駅で外に出ようとする動きです.

熱膨張係数が違う=Bさんたちはこの駅では降りないということに相当します.

Aさんはなんとしてもこの駅で降りたいので,Bさんたちを押しのけながら移動します.

しかし電車内のスペースには限りがありますので,押しのけられたBさんたちは何人か電車の外にはじき出され,転倒しケガをします.これすなわちコンクリートが壊れることと同じです.

こうなってはいけませんよね.

なので,コンクリートと中の物体で熱膨張係数が近いものを利用します.

熱膨張係数が近いということは,どれだけ温度変化が起きても膨らんだり縮んだりする量が近いということです.

電車の例だと,Bさんたちもこの駅で降りるということに相当しますので,上記のような問題がなくなるのです.

熱膨張イメージ図

ちなみに鉄とコンクリートの熱膨張係数はだいたい 0.00001 (1/℃) です.

1度温度が上がったら全体の大きさの0.00001倍ぶんだけ大きくなる(早い話,1.00001倍になる)ということですね.

数値で見ると小さいように見えますが,それでも大事なことなんですね.

鉄以外の頑丈な材料だったらなんでもいいや~ってわけじゃなくて,鉄が選ばれた理由としてはこれが一番大きいのではないでしょうか.

錆や塩に弱い鉄筋を守ってあげる

今まで引張に弱い鉄筋を補強するためとか,脆性であるコンクリートに靭性を付与するためとか,「鉄筋はコンクリートをサポートするためのもの」といったような書き方でしたので,最後はその逆のこともあるんだよということを書こうと思います.

鉄筋は文字通り鉄ですので,錆びれば劣化します.

錆は酸化によって発生しますので,アルカリ性であるコンクリートが加わることにより,酸化しにくくなります.空気に触れづらいというのもそうですね.

また,海に近い地域では,塩害といって塩分による鉄筋の劣化もあります.

鉄筋をコンクリートの内部に入れることによって,塩分が鉄筋に触れづらくなるので被害を抑えることができます.

鉄筋が入っていないコンクリートもある?

ここまでで,コンクリートと鉄は相性抜群で切って離せないような関係であることがなんとなくわかっていただけたかと思います.

しかし,世の中には鉄筋が入っていないコンクリートも存在します.

えっじゃあ引張力かかったらヤバイじゃんって思えたあなたは理解力がスゴイ!

確かにただ鉄筋が入っていないだけでは,ただの引張力に弱いコンクリートですから,すぐに壊れてしまいます.

なので,このコンクリートには,あらかじめ圧縮力をかけておきます.

圧縮と引張は反対方向の力ですので,引張力がかかったときに打ち消し合うことができるように,圧縮しておくのです.

プレストレストコンクリートイメージ

このようにあらかじめ圧縮力がかかったコンクリートのことを,「Prestressed Concrete」と書き「プレストレストコンクリート」と読みます.直訳すれば「あらかじめ力のかかったコンクリート」ですね.

プレストレストコンクリートの最大のメリットは,ひび割れが発生しにくいことです.

鉄筋コンクリートは引張力を鉄筋が受け持ってくれるとはいえ,ある程度はコンクリートにも負荷されます.

故にひび割れが発生してしまいますが,プレストレストコンクリートはそもそも引張力を打ち消しているので,ひび割れが発生しにくいのです.

ひび割れがあると,そこから雨水などが侵入し鉄筋が錆びたり,難しい言葉を使いますが応力が集中する原因にもなります(要は壊れやすくなる)ので,こういった製法があるんですね.

まとめ

ノートの写真

ということで,今回はなぜコンクリートの中に鉄筋が入っているのかについてのお話でした.

まとめると,

  • コンクリートが引張力に弱いため,鉄筋で補強するため.
  • コンクリートが脆性なので,鉄筋で補強するため.
  • 熱膨張係数がコンクリートと鉄で近いため.
  • 鉄の錆や塩害から守るため.

という感じです.

いくらか数字が出てきますが,難しい式は出てこず,絵と文字だけですので,数式が苦手な方だったり実験がめんどくさい方でもうまく自由研究テーマにできるのではないでしょうか.

鉄とコンクリートの話だと,他にもコンクリートの詳しい材料の話や,鉄筋の配置の話,施工性の話など,いろいろできると思います.

そのうちまとめていけたらと思いますので,出来上がったら是非読んでみてくださいね.

それでは,今回もお読みいただきありがとうございました!