[雑学・自由研究] グラスハープの原理を解説! キーワードは「共振」

2022年10月1日

概要

グラスハープの音が鳴る仕組みと,水量やグラスの種類によって音の高さが変わる理由について解説します.

グラスハープってなに?

グラスハープとは,ワイングラスなどに水を入れ,濡れた指でこすると音が鳴る自宅でも作れる楽器です.

水の量やグラスの種類を変えるだけで音の高さが変わるのですが,不思議ですよね.

しかしそれにはちゃんと理由があります.

そして知ってしまえばものすごく簡単なことです.

内容の簡単さ,楽器を作る楽しさ,演奏する楽しさ,発見する喜び,なにもかもが自由研究向きだと思いますので,夏休みの宿題で困っている方は是非参考にしてみてください!

まずは振動の特徴について理解しよう

よっしゃ早速作ってみよう! となる気持ちはよくわかりますが,その前になぜ音が鳴るのか,なぜ水の量やグラスの種類によって音の高さが変わるのかをしっかり理解しましょう.

とりあえずやってみよう→疑問が生まれた→なぜだか考える,という流れもいいですが,

まずはしっかり理解する→その上で実際にやってみて本当か確かめる,といった方が頭に入りますし,長期的にも記憶できますよ.

音は振動である

それでは解説に入りましょう.

まず,音というのは振動現象です.物が震えるなどして発生した振動が空気を伝わり,我々の耳を介して音として認識します.

喉に手を当てて「あ~」と発声してみてください.手に振動が伝わると思います.つまり喉が震えています.声というのは,喉を振動させて出したものであり,それが空気を伝わり耳に届くのです.


振動というのは揺れるものですので,波を描きます.

簡単な図にしてみましょう.

引用どうぞ

色々言葉が出てきましたね.

この中で音の高さに関係があるのは,振動数(周波数とも言います)です.

振動数が大きいほど=一秒間に揺れる回数が多いほど音は高くなります.

浴槽にお湯を張り,浴槽端っこの水面をゆっくりパシャパシャしてみてください.この時,パシャパシャの音の高さと,浴槽のもう片方の端っこに到達する波の数に注目してください.

だんだんパシャパシャを早くします.すると,音は高くなり,波の数も多くなるはずです.

波の数が増えるということは振動数が大きくなっており,音が高くなっているのです.

また,強くパシャパシャするほど音が大きくなります.これは強く揺らすことにより振幅が大きくなっているからです.

グラスハープの重要な原理は共振

グラスハープの話に少し戻ります.

動画を見ると,グラスには優しく触っていますよね.

まあ当然ですね,グラスは割れやすいですから,強く叩いたら割れてしまいます.

優しく触っているということは音は発生しにくいはずです.

ではなぜしっかりと音が出ているのでしょうか?

これは共振という現象が関係してきます.

共振とは,物体にとある振動数で力を与えたとき,振幅が大きくなる現象のことを言います.

引用どうぞ

Hzは振動数(周波数)ですから,100Hzの方をより強く揺らしているわけではないですよ! より早く,より小刻みに動かしているのです.同じ大きさの力であっても,とある振動数で揺らした場合だけ振幅が大きくなるのです.

この時の振動数を固有振動数といい,物体ごとに決まった値を持ちます.例えばワイングラスでは 283Hz,マグカップでは 526Hzといった感じです(値は適当です).

この振動数で力を加えられるとそのワイングラスは激しく振動するぜ! という指標が固有振動数ということですね.

少し前の話に戻ると,振動数が大きいほど高い音が鳴るので,固有振動数が小さいと低い音,大きいと高い音になります.

ここから先は別に覚えなくてもいいのですが,理論上,固有振動数の個数は無限個あります.例えば同じワイングラスでも 100Hz,120Hz,136Hz… といったようにたくさんの固有振動数を持っています.

この複数の固有振動数を値の低い順に並べて,最初から一次モード,二次モード,三次モード…なんて言ったりします.

また,その固有振動数によって揺れやすい場所や揺れ方が変わります.

例えば100Hzの一次モードではワイングラスの縁が揺れやすい,120Hzの二次モードでは根本付近が揺れやすいなどです.

シミュレーションソフトがあればわかりやすい図を出せるのですが,手元にありませんので,その図が載っている論文を引用します.

https://www.comsol.jp/paper/download/189001/KOZUKA_paper.pdf (参考:COMSOL Multiphysics を用いたグラスハープの振動解析)

論文を見るのは抵抗があるかもしれませんが,図6の(b)および(c)がそれです.

この場合は1364Hzで縁4箇所が揺れやすい,3837Hzで縁6箇所が揺れやすいということですね(赤が揺れる青が揺れない箇所).


ここまでの話を整理すると,

  • 振動数を大きいほど音は高くなる.
  • グラスハープは共振により音が大きく発生している.
  • 共振は物体の固有振動数と力の振動数が同じ場合に発生する.
  • つまり固有振動数が小さいと低い音,大きいと高い音になる.

です.

水の量が固有振動数に関係あり!

音の高さにはワイングラスの固有振動数が大事なことがわかりました.

それでは,その固有振動数はどう決まるのでしょうか?

まともに求めようとすると大学レベルの数学知識等が必要になり自由研究どころではなくなってしまいますので,そこはスルーして「何が固有振動数に影響を与えるか」を見ていきましょう.

以下の式の値が大きいほど固有振動数は大きくなります.

$$\frac{物体の固さ}{重さ}$$

物体が固いほど固有振動数は大きくなり,やわらかいと小さくなります.また,軽いほど大きくなり,重いほど小さくなります.

ワイングラスに水を入れると重くなるので,固有振動数は小さくなり,音は低くなります.

引用どうぞ

つまり,高い音を出したいならば水の量を少なくし,低い音にしたいならばたくさん入れてあげればいいのです.

グラスを変えると物体の固さと重さが変わるので,固有振動数が変わって音も変わります.

最初に原理を理解せずに実験してもこの答えにはたどり着くでしょうが,最初に理解しておいた方が実験のしがいが出てきますね!

実際にやってみよう

事前に知っておきたいことはこれで終わりです.

実際にやってみてください.

グラスを指でなぞるというよりは,弾く感じの方が音が出やすいと思います.

ただ割れやすいものなので力加減には気を付けてくださいね.

振動数を意識して指をプルプルさせなくても,普通に弾けばそれなりに音が出ます.


自由研究にまとめるならば,ドに近い音は水が何CC,レに近い音は何CC…といった風に探していくといいかもしれませんね.

まとめ方としては,

  • 先に実験してからその原理を究明する.
  • 先に原理を理解してから実際に実験してみる.

のどちらでもいいと思います.ここは子供自身に考えさせてまとめていくと成長できますね♪

まとめ

今回のお話を箇条書きにするとこんな感じです.

自由研究にまとめる場合はここを参考にするとよいでしょう.

  • 音は振動現象である.
  • 音の大きさは振幅,音の高さは振動数(周波数)によって決まる.
  • 振動には共振という重要な現象があり,グラスハープも共振を利用していろいろな音を出している.
  • 共振は物体が持つ固有振動数と力の振動数が同じ場合に発生する.固有振動数が小さければ低い音が鳴り,大きければ高い音が鳴る.
  • 固有振動数は物体の固さと重さによって決まる.グラスの違いや水の量で固有振動数が変化するので,音の高さも変わる.

図は私が描いたやつなのでコピペして使ってもいいですよ!

文章もコピペしてもいいですが,こちらは自分で書いた方が力が付くと思います.

この記事を読んで興味を持って自由研究に使われることがあれば嬉しいです♪

またこれをきっかけに理系分野,特に力学や工学への興味も持っていただけたら最高に嬉しいです😆

実験するだけなら簡単なのでぜひやってみてね~!!